文章を書くことに苦手意識を持っている経営者、事業主の方々にとって、
今回ご紹介する本『10倍速く書ける 超スピード文章術』は、
文章を書くという行為そのものの見方を変えてしまうかもしれません。
アメリカ合衆国の建国に貢献した政治家、ベンジャミン・フランクリンはかつて、こう言いました。
By failing to prepare, you are preparing to fail.
(準備を怠ることで、失敗する準備をしているのだ。)
これは、限られた時間内に文章を書くときにも、参考にするべき警句です。
なぜなら、文章を速く書けるかどうかは、文章を書く才能や、タイピングのスピードではなく、
文章を書き始める前の準備で決まるからです。
「文章を書く才能」は必要ない
スモールビジネスを営む経営者や事業主にとって、ブログやソーシャルメディアでの情報発信は、
ビジネスそのものと事業主のパーソナリティを知ってもらい、ファンを増やすのに欠かせないものの一つですが、
「でも、文章を書くのが苦手だから・・・」と、尻込みをされる方も少なくありません。
こういう方々の多くは「ブログを始めるなら、きちんとした文章を書かなければならない」という不安にとらわれているのですが、
実は、そのような不安を覚える必要は、そもそもないのです。
なぜなら、
ビジネスで使うほとんどの文章では、「文才」など求められていないからです。…(中略)…ビジネスで用いられる文章で伝えるのは、「文章そのものの魅力」ではありません。「読者にとって役に立つ内容」を、わかりやすく伝えることができれば、それで十分なのです。
(『10倍速く書ける 超スピード文章術』7ページ)
文章を書くのが苦手、という事業主の方でも、その多くは、
自社の商品・サービスや、自分自身の理念などを、「口頭で」説明することには何の抵抗も感じません。
スラスラと話せることを「書けない」というのは、「ちゃんと書かなければならない」という意識が、アイデアの流れをブロックしているからなのです。
「何を書いたらいいのかわからない」のは、目的が決まってないから
新しくブログを始めた事業主の多くは、数ヶ月も経たないうちに、ブログを更新する頻度が落ちてきます。
それは、仕事が忙しくてブログを書く時間が取れないという表向きの理由に加えて、それ以上に、
そもそも「何のためにブログを始めたのか」ということが曖昧になっていることに原因があります。
最もやってはいけないことは、目的が定まらないまま文章を書くことです。
目的を決めずに書くと、「文章を書く」という行為そのものが目的になるのです。
書くこと自体が目的に化すと、「書き方」や「表現」にこだわり始めて、時間がかかります。
(『10倍速く書ける 超スピード文章術』 70ページ)
スモールビジネスの事業主であるあなたにとって、ブログを書く「真の目的」とは何でしょうか?
「ブログを書く」ことはあくまで目的を達成するための手段であって、目的そのものではありません。
ビジネスの内容や、取り扱っている商品・サービスを知ってもらいたいからですか?
それとも、事業主であるあなたの知識や技術、そして個性を知ってもらいたいからですか?
その「真の目的」がはっきりすることで、「誰のために」書くブログなのかもはっきりします。
「誰のために」がわかれば「伝えたいこと」が見つかる
あなたのブログを読んでもらいたい人がわかれば、
その読者に伝えていきたいこと、すなわちブログに書く「ネタ=素材」を、次々と見つけることができます。
素材があれば、少なくとも「何を書けばいいかわからない」という悩みは消えます。
私が特別なのではありません。「文章を速く書ける人」がやっているのは、要するにそういうことだと思っています。素材を見つける大切さを知っているのです。
文章を書くことが決まった瞬間から、常にアンテナを立てている。
そしてどんどん素材を集める。
そうすれば、書く前に、書く内容が準備されている状態になる。
だから書くことに困らず、速く書けるのです。
(『10倍速く書ける 超スピード文章術』38〜39ページ)
そしてもう一つ、無視できないアドバイス。
自分が伝えたくてたまらない素材を集めると、文章は速く書けます。
(『10倍速く書ける 超スピード文章術』223ページ)
あなたのブログを読んでもらいたい人に、あなたが伝えたくてたまらないことはなんですか?
もしかすると、伝えたいことはある、でも文章を書くのはやっぱり苦手だ・・・という心の声が聞こえてきていますか?
となれば、しゃべる環境を意図的につくればいいのです。
それを録音し、その内容を素材に、文章に変換していけばいい。
(『10倍速く書ける 超スピード文章術』 130ページ)
例えば、あなたがお客様からの相談にのっているとき、
あるいは、誰かにあなたが取り扱っている商品やサービスを説明するときに、
お相手にあらかじめ許可をいただいた上で、スマートフォンで対話を録音しておき、
あとで聴き返して、対話を文字に起こし、それを編集してブログの記事にするというやり方が考えられます。
これなら、「文章を書く」ということへの抵抗が、少しは薄れてくるのではないでしょうか。
まとめ:とにかく書くことが一番の近道
『10倍速く書ける 超スピード文章術』には、これまで引用したこと以外にも、
文章を書くチカラを高めるたくさんの知恵、テクニックが詰まっていますが、
ブログやソーシャルメディアでの情報発信に苦手意識を持っている事業主にとってまず大切なことは、次の3つに集約できます。
- ビジネスに関連した文章を書くのに「文才」は必要ない。
- 情報発信をする「目的」をはっきりさせれば、誰に対して情報を発信するのかが決まる。
- 誰のために文章を書くのかがわかれば、「何を」伝えたいのか、伝えるべきなのかもわかる。
文章を書く「前」の準備を怠らずにやることで、いざ文章を書こうとして何も書けないという失敗を避けることができます。
あとは、ブログやソーシャルメディアで、数をこなしていくことです。練習することなしに、上達することはありません。
そして、最後に・・・
先日の「発信が「商品」になる時代に、選ばれるための発信とは?」の記事で、
エクスペリエンス・マーケティング(エクスマ)を提唱している藤村正宏さんの新著の一部をご紹介しました。
あなたがどんな商品を売っているかとか、どんな会社を経営しているかというのは、実はあまり大きな問題ではありません。
それよりも、あなたがどういう人で、どんな価値観を持って経営をしているのか。
どんな「思い」でビジネスをやっているか。
そういうことを、SNSを使って、あなたらしいコトバで発信をして、たくさんの人たちと「ゆるやかな関係性」をつくっていくこと。
結果的に、それがあなたのビジネスを成功させる、一番いい方法なのです。
これはひとりだけの企業でも、何万人も従業員がいる大企業でも、同じです。
(『SNS消費時代のモノの売り方「3つのF」が価値になる!』38ページ)
そのような価値観や思いを情報発信の「ネタ=素材」としていくために、『10倍速く書ける 超スピード文章術』では「手帳に雑感を書きとめること」を勧めています。
毎日のように雑感を書きとめ続けていれば、自分の雑感は溜まっていきます。そして、自分がどんなことに興味があるのか、どんなことに感動するのかなど、物事に対する感性が研ぎ澄まされていくのです。
書き溜めた雑感は、素材の宝庫です。
メッセージを発信できる素材が、どんどん溜まっていくことになる。
『10倍速く書ける 超スピード文章術』128ページ)
普段からしっかり準備をしておくことで、文章を書くための底力がついてきます。
あなたらしいコトバで発信して、あなたがたくさんの人たちと関係性をつくっていくためにも、『10倍速く書ける 超スピード文章術』はオススメできる一冊です。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。