私は一時期、外出したとき、
トイレ掃除に励んでいた時期がありました。
お客様が入居しているオフィスビル、
立ち寄ったカフェやスターバックス、
あるいは駅の公衆トイレなど・・・
便座を拭いたり、水ハネを拭き取ったり、床に落ちているゴミを処分したり。
もちろん、トイレットペーパーの先を三角に折りたたむことも。
そのころの私は、新たに立ち上げようとしたビジネスが無残に失敗したり、
仕事上の人間関係が急に悪くなったり、
以前からの友人が離れていったりなど、散々な状況でした。
自己憐憫と人間不信に陥り、なにもかもが思うように進まないことに憤りを感じながら、
無気力に日々を過ごすこともありました。
もちろん、そんな精神状態では周囲のモノゴトが好転するはずもなく、
絶望的になって、すべてを投げ出そうとさえ思ったときに、
「なんでもいいから、人がやりたがらないことをやるといいよ。
ただし、誰も見ていないところで、しかも見返りをいっさい求めずにね。」
そうアドバイスしてくれた方(世間的には「成功者」と呼ばれる人です)がいました。
まずは「誰にも知られない善行」、つまり「陰徳」を積め、ということだったのです。
「何もかもうまくいかない」という想いにとらわれているときは、
モノゴトが「こうでなければならない」という、
自分のエゴがつくりだした理想(そして、幻想)にとらわれているときでもあります。
そのような状況から抜け出すには、
あえて見返りを求めない親切や奉仕活動へ自分の意識をシフトすることで、
自分のエゴに、自分の思考と行動がそれ以上支配されてしまうことを止め、
自己中心的な考えから、自分以外の誰か、あるいは社会へと視点を向けなおすことで、
自分自身と、周りの世界との結びつきを一から作り直していくことがキッカケになる・・・
私にアドバイスをしてくださった方は、そんなことを伝えたかったのでしょう。
そして、
見返りを求めない善行を積み始めたら、突然あらゆることがうまく回り始めた・・・
という「引き寄せの法則」のような劇的な展開は起こりませんでしたが、
すぐに他人や環境を責めたくなるココロの悪しき態度は、少しづつ治まっていき、
そうこうしているうちに、
「幸運」と呼べるような出来事も起こり始めるようになりました。
それは善行の見返りなどではなく、
善行を通じてまっとうな精神状態を取り戻したことで、
それまでは「幸運」とは捉えられなかったような出来事に対しても
「あぁ、ラッキーだなぁ」と感謝できるようになったからなのでしょう。
そして、あらためて気づいたのが、
私にアドバイスをくれた方のような、いわゆる「成功者」の人たちは、
自らのビジネスや言動を通じて、ものすごい量の「徳」を積んでいるということです。
社員やその家族が豊かに暮らせるだけの給料を払い、
利益を出して国に税金を納め、
そして自らの言動によって多くの人たちの人生を救い、生きる希望を与えていることの
「凄さ」に、あらためて気づかされたのです。
多少モノゴトが思ったようにならなくても、まったく気にしない。
ひたすら、どうすれば他の人たちと社会によりよく貢献できるかを考え続け、実行し続ける、
その「凄さ」に。
私はまだ、人知れず善行を積むことくらいしかできませんが、
いずれは、そんな成功者の方々のように、大きな「徳」を積めるように、
もっと成長していきたいと思っています。
いや・・・
成長します。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。