ゴールデン・ウィークが明け、新入社員が現場に配属されたり、現場での研修が本格化してくるころですね。
研修を受けたり、何かを学ぶときに、私がいつも意識していることがあります。
それは「質問の質が、学びの質を決める」。
学ぶ人が教える人に「良い質問」を投げかければ、より効果的に、より濃い学びが得られるということです。
質問する相手が「仕事ができる人」であれば、その効果はさらに大きくなります。
そして、最小の時間で最大の学びを得るためには、「仕事ができる人」から学ぶに限ります。
今回は、「仕事ができる人」から学ぶときに役立つ具体的な質問を、10のカテゴリに分けてご紹介します。
その前に、注意していただく点を2つ・・・
「仕事ができる人」が、教えることにおいても「できる人」とは限らない
超一流と呼ばれる人でも、自分自身のスキル、そしてそのスキルを身に着けてきたやり方をうまく言葉にできない人がいます。
「仕事ができる人」自身の本能的な勘や直感に頼っていてノウハウが体系化されておらず、誰にでも再現が可能なやり方ではないときもあります。
自らの仕事やスキルについて、あれこれと詳しく質問されることを嫌がる人もいます。
「とにかく、言ったとおりにやってくれる?」と横柄な教え方しかできない人もいます。
効果的にスキルを学び、かつ学びのクオリティを上げるためには、こういうタイプの人たちから学ぶことは避けましょう。
あなたが入社したばかりの新人で、もしあなたの教育係がこのようなタイプなら、教育係の上司に相談することをおすすめします。
相手は常に「出し惜しみ」していると知る
あなたが社内競争のある環境で働いているなら、いくら新人や若手が相手でも、自分の持てるスキルやノウハウの「すべて」を教えてくれる先輩や上司はいないと考えておくべきです。
たとえ意図的に隠さなかったとしても、日々無意識のうちにやっていることを話し忘れることは、しばしば起こります。
さらに、お金を払って外部のセミナーや勉強会に出席したときも、講師の人たちはノウハウを小出しにしているという前提で、話を聞きましょう。元々、自らのノウハウをお金に変えている人たちです。自分が手にするお金に見合ったことしか話してくれません。
しかし、「出し惜しみ」があるという前提に立つといっても、相手の話を疑心暗鬼な態度で聞くということではありません。
「ここで教えてもらったこと以外にも、まだまだ自分が学ぶべきことがあるはずだ」という謙虚な姿勢と、さらに学ぶ意欲を持ち続けるためです。
教えを乞う相手を常にリスペクト(尊敬)して、たとえ断片的であっても貴重な知恵を授けてくれたことに感謝し、いずれ自分自身が「仕事ができる人」になったときには、しっかりと恩返ししましょう。
これらを踏まえた上で、「質問」の持つパワーを存分に活用していきましょう。
まず最初の4つは、「仕事ができる人」が認めている「仕事ができる人」を知り、「学びを乞う人」のストック(在庫)を増やすための質問です。
ストックを増やしておくのは、注意点としてお伝えした「教えるスキルが低い可能性」と「出し惜しみ」への対策です。
いますぐにはお話を伺うことができなくてもしっかりとメモを取っておき、積極的に機会を求めて、お話を聞きに行きましょう。
1)「仕事ができる人」の原点を探る質問
- あなたを「仕事ができる人」にしたものは何ですか?
- あなたを教えた人、あなたに影響を与えた「仕事ができる人」は誰ですか?
2)隠れた「達人」を探す質問
- この分野の「仕事ができる人」で、あまり知られていない人はいますか?その人は誰ですか?
3)「異端児」を探す質問
- 他の人たちとはまったく違うやり方をしている「仕事ができる人」はいますか?
- その人たちが「仕事ができる人」になった理由、そして「仕事ができる人」でい続けられる理由は何でしょうか?
- そんな変わり者の「仕事ができる人」を、どう評価しますか?
4)「急成長する」秘訣を探る質問
- とくに優れた才能がないのに、この分野で「仕事ができる」ようになった人は誰ですか?その人はなぜ、仕事ができるようになったのでしょうか?
- 以前は他の人たちより劣っていたのに、急速に力をつけて「仕事ができる」ようになった人は誰ですか?その人はなぜ、仕事ができるようになったのでしょうか?
「なぜ・・・」の部分の答えが得られなければ、後日、ご本人に聞いてみましょう。
次に、教える人としての実力をチェックしておきましょう。
5)「教えるスキル」を測る質問
- これまで他の人にこのスキルを教えたことがありますか?
- その人たちは、あなたと同じような成果を出しましたか?
- もし成果が出なかったのなら、何が問題だったのでしょうか?
この一連の質問で、再現性のあるノウハウを教えるスキルがあるかどうかが分かります。
続けて、より効果的な学びを得るための質問を見ていきましょう。
6)初心者が陥る「落とし穴」を知る質問
- 初心者(または新人)がスキルを学ぶときに起こりがちな最大のミス、失敗は何ですか?
- 初心者がスキルを学んでいるときに、避けるべきことは何ですか?
- スキルを学んでいる初心者が、もっとも時間をムダにしてしまうことは何ですか?
失敗しがちなポイントをあらかじめ知っておくことで、時間とエネルギーのロスを避けることができます。
失敗から学べることは多いとはいえ、避けられるものなら、できる限り避けたいですからね。
7)成長の「近道」を探す質問
- 初心者(新人)から「仕事ができる人」になるまでに、どれくらいの期間が必要ですか?
- その期間中の成長曲線はどうなりますか?
- スキルが伸び悩む期間はありますか?もしあるなら、あなたは、その期間をどう乗り越えましたか?
- 「仕事ができる人」になるまでの期間を半分にするために、何をやるべきでしょうか?その期間をさらに10分の1にするためには、何をやるべきでしょうか?
最後の質問は、相手によっては反感を買う恐れがあります。
「自分は何年もコツコツと努力してここまで成長してきたのに、それを半分の期間で学びたいなんて生意気な・・・」などと思われることを避けるため、
「1日も早く先輩のお役に立ちたいので、もし短期間で成長できる方法があるなら、全力で取り組みます。先輩の秘訣を、ぜひ教えて頂けませんか?」のように、謙虚さと相手への忠実さをアピールして聞き出しましょう。
8)活用できる「リソース」を知る質問
- 現場での経験以外に、スキルを身に付けるのにもっとも役に立った市販の本、教材は何でしたか?
- もし独学でしか学ぶことができないとしたら、何を教材に使いますか?
「仕事ができる人」が勧める本や教材には、一読の価値があります。成長スピードを上げるための投資として、お金と時間を使いましょう。
9)失敗の「原因と対策」を知る質問
- あなたのように「仕事ができる人」でも起こりがちなミス、失敗はありますか?
- それらを避けるために、どんな工夫をしていますか?
この世にまったく失敗しない人はいませんが、避けられる失敗を避けるための知恵は、あらかじめ身に付けておきましょう。
10)成果を出し続ける「秘訣」を知る質問
- あなたのように「仕事ができる人」が、より良い成果を安定して出すために守っているルール、法則は何ですか?
「仕事ができる人」には、仕事ができる「仕組み」があります。その知恵を取り入れて成長スピードを上げましょう。
いかがでしたか?
具体例として挙げている質問は、「仕事」以外のスキルを学ぶときにも応用できます。
表現や細かい言い回しなどをTPOに応じて使い分け、実りのある学びを手に入れて、短期間でスキルを身に付けることに役立ててみてください。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。