「ノミの実験」の話を聞いたことはありますか?
やる気やモチベーションの上げ方に関して語られるのに加えて、自分が目標としている人に会いに行って直接教えを請うのが大切、といった関係性作りの重要さにも結び付けられるストーリーです。
ざっくりと「ノミの実験」をまとめてみると…
ノミはもともと、体長の50倍から100倍の高さまで跳躍できる能力を持っています。
そのノミに、小さいコップなどでフタをかぶせると、ノミはそのフタの高さまでしか「跳べなく」なります。
ノミは、かぶせられたフタが、自分が飛べる高さの限界だと思い込んでしまい、フタを外されても、フタの高さまでしか「跳ばない」ノミになるのです。
そのノミを、本来跳べる高さまで跳ばせるように戻すには、どうすればよいのでしょうか?
答えはカンタンです。
「跳ばない」ノミと、普通のノミを、一緒にしてやればいいのです。
生まれ持った能力のまま、ピョンピョンと高く跳んでいる仲間を見て、「跳ばない」ノミは自分に課せられていた限界がただの思い込みであったことに気付き、本来のチカラを取り戻すのです。
「深読み」から得られる渡世の知恵
この「ノミの実験」、環境を変え、一緒にいる人を変えることで、人間は良い方向に変わることができるということを説いているエピソードです。
しかし、深読みすると、違う視点から、まったく性質の異なる教訓が得られるのです。
限界を生みだす元凶は、自分以外である
この実験で、ノミにフタをしたのは、ノミ以外の存在です。
ノミが自らフタをかぶせて、自分自身に制約を設けたのではありません。
ノミ本人は気付いていませんが、制約を生みだす環境のなかに、意図せずに放り込まれたのです。
同じように、私たちの周りにも、あれやこれやと「フタ」をかぶせようとする人たちがたくさんいます。
意図せずにフタをかぶせられ、私たちが生まれ持ったポテンシャルではなく、その「フタ」が、自分の限界だと信じ込まされているのです。
両親、学校、会社・組織、友人・知人、上司・先輩、地域のコミュニティ、宗教観、商習慣・・・
自分に「フタ」をかぶせているものの存在に気付き、「フタ」によって制限されているものに気付くことが、自分本来のチカラを取り戻すための第一歩になります。
引きずり下ろそうとするチカラが働く
「跳ばない」なったノミは、生まれ持った能力のまま高く跳んでいるノミを見て、素直に自分のポテンシャルに気付きました。
一方で、私たち人間社会には、なんの制約もなく伸び伸びと自分の能力を発揮している人を見て、「自分にもできるんだ!やってみよう!」と素直に、肯定的に解釈する人たちだけが存在しているわけではありません。
能力をフルに発揮している人たちに対して「ねたみ」や「やっかみ」を持つ人たちも、たくさんいます。
こういうネガティブな感情を持つ人たちは、高く跳んでいる人たちのことを、批判し、非難し、因縁をつけます。自分たちと同じ高さしか跳べないようにしたいのです。
例えるなら、「跳ばない」ノミたちが、元気に跳んでいるノミの足元に障害物を置いたり、あるいはそのノミの足を傷つけようとしているのです。
自分本来のチカラを出し続けるには、足元をすくおうとする「跳ばないノミ」とは行動を共にしないことが大切なのです。
与えられた解釈を鵜呑みにしない
心温まるエピソードも、その一面だけを捉えていては固定観念を生み出します。
押し付けられた意味だけでなく、自分なりに裏読みして、自分独自の解釈をいくつも加えることで、そのエピソードから得られる教訓の深みが増します。
今度、感動する話や勇気づけられる話を聞いたら、そのウラに隠れている「ブラック」な教訓を解き明かしてみましょう。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。