こんにちは、廣世悟です。
シリーズでお届けしている、お客様に選んでもらえるビジネスを創り出すためのアイディア発想法。
今日は3番目の基本パターンとして、「掛ける」方法を取り上げます。
「掛ける」発想は、一見して関係が無さそうな複数のモノゴトを組み合わせることで、新しい付加価値が生まれてくるというものです。
「足す」発想との違いは、「足す」が複数のモノゴトから一つの(統合された)新しい価値を創造するのに対して、「掛ける」は複数のモノゴトの組み合わせから様々な(異質の)価値を創造するところにあります。
例えば、アップルのiPhoneは「iPod+携帯電話+ネットブック」を「足して」生まれた新しい(一つの)価値ですが、iPhoneに対応したアプリケーションをプログラムできるソフトウェアを万人に公開して、かつアプリをダウンロードできる場所(App Store)を提供したことは、「掛ける」発想の一例です。
この組み合わせによって、アプリ開発者が自らのアプリを販売できる機会が得られるだけでなく、アップルにとっても新たな収益源を生み出し、さらにiPhoneの利用者は、ユニークな機能を持つアプリの恩恵を受けられるという、複数の価値が生まれています。
グーグルの検索エンジンも、「掛ける」発想の一例です。
世界に存在する全てのウェブサイトの情報を読み取り、記録して、単語やフレーズでお目当てのウェブサイトを検索できる機能を提供したことが、特定の「単語やフレーズ」に経済的な価値を生み出し、キーワード広告という新たな仕組みと収益源を創り出しました。
さらに、このシリーズでお馴染みの「和菓子」と「スポーツジム」に関して、「掛ける」発想を適用してみると・・・
- 和菓子×お客さんのプロフィール情報 → お客さん本人だけでなく、家族の情報も入手して、カスタマー・リレーション戦略を展開。お中元やお歳暮という時節のニーズに合わせて、様々な和菓子の使い方・楽しみ方を提案するダイレクトメールや電子メールを送ることに加えて、誕生日・慶弔などの情報を元に、関係する外部業者サービスの紹介を行う。外部業者からは紹介料(コミッション)、あるいは広告料をいただく。
- スポーツジム×食品宅配 → スポーツジムの会員データを利用して、食品宅配業務へ進出。新たな収益源とするだけでなく、会員の体型データ・ライフスタイル・トレーニング頻度に合った食事を提供して、より健康的な生活を実現してもらうための総合的なライフ・サポート・サービスへと進化させる。
これらは、あくまでも思いつきベースの一例ですが、事業のスケールが広がった印象がありませんか?
スケールが広がることが、「掛ける」発想の醍醐味です。組み合わせ方によっては、いくつもの問題を一気に解決してしまう、破壊力のある発想法です。
「掛ける」方法には、ちょっとややこしい印象を受けるかもしれませんが、テクニカルな側面にこだわるよりも、まずは組み合わせを創ってみるのが一番です。
どうくっつけられるのか、すぐにはイメージが湧かないけれど、とりあえず組み合わせてみる・・・そういう「発想のストック」をアタマの中に置いておくだけで、お客さんの話を聞いたり、市場調査データを調べるといったちょっとしたキッカケで、イメージが湧き出てくることがあります。
「掛ける」発想は、私たちの身の回りにあるサービスにも、たくさん隠されています。
普段何気なく使っているサービスの仕組みを解き明かしてみるのも、面白いです。
自分自身でいくつも組み合わせを作っているうちに、他のサービスの仕組みも見破りやすくなってくるので、ぜひ試してみて下さい。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。