こんにちは、廣世悟です。
お客様に選んでもらえるビジネスを創り出すためのアイディア発想法、2番目の基本パターンは、「引く」方法です。
あらゆる商品・サービスは、それを構成している「要素」に分解することができます。
原材料、生産設備・プロセス、デザイン、流通チャネル、人材・・・などなど。
これらの要素の一部を減らす、あるいは無くすことで、逆に新しい価値を生み出そうというのが「引く」発想です。
商品やサービスを提供する側としては、自分にできることは何でもやって、お客様に便利だと思ってもらったり、喜んでもらいたいのが心情です。
競合する商品・サービスが提供しているものは、自分たちでもできる限り提供しようと考えます。
その想いが強いあまりに、商品の機能やサービス内容を「過剰」な状態にしてしまいがちです。
しかし、現実には、なんかいろいろと機能がありすぎてよく分からないとか、煩わしいから最低限のことさえやってもらえればいい、というお客様もいます。
こんなにたくさんの機能やサービスを提供される必要はないんだけど、どこもかしこも同じようなものしか提供していないので、あえて何も言わないというお客様もいます。
「引く」発想の一つの例は、自社の商品やサービスについて、関係しているすべての「要素」を書き出し、それらの要素の一つ一つを「これが無かったらどうなるだろう?」というアプローチで見直すことです。
単純にいずれかの要素を無くすことに留まらず、何かを無くす代わりに、残した要素を研ぎ澄ませたり、残した要素に今までに無かった役割を与えてみるという視点も、アイディアの幅を広げてくれます。
例えば、前回同様、和菓子とスポーツジムを題材にして、「引く」発想を適用してみると・・・
- 「白砂糖」を使わない和菓子 → 果物の甘みを使う和菓子
- 「包装」しない和菓子 → 店頭ですぐに食べられる、あるいは食べ歩きできる和菓子
- 「店舗で売らない」和菓子 → 通販限定の和菓子
- 「建物」のないスポーツジム → トレーラーで移動するジム
- 「スタッフ」のいないスポーツジム → 利用者自身が施設メンテナンスを行うジム
- 「入会金・月会費」のないスポーツジム → 誰でも利用できるジム
「引く」発想は、「あって当たり前」という要素を無くすものなので、当事者の視点からは違和感を感じるアイディアがたくさん出てきます。
でも、その「違和感」こそが、違いを生み出すヒントになります。違和感の原因になっていることを見つけ、徹底的に調べてみましょう。あって当たり前だと思っていたことが、実はお客様の視点からは、どうでもよかったことだった・・・という、衝撃の事実が判明することもあります。
皆さんの身の回りのもの、あるいは自社の商品・サービスを、一度「要素」に分解して、「引く」発想を試してみると面白いですよ。
バカバカしいアイディアや、思わず笑ってしまうようなアイディアの中に、世の中を変えるアイディアのタネが見つかるかもしれません。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。