私たちはなぜ、プレゼンテーションに、スライドを使うのでしょうか?
考えるまでもありません。私たちの話を、より伝わりやすく、理解しやすいものにするためです。
しかし、現実には、スライドのせいで話が分かりにくくなるという「悲劇」が、よく起こっています。
「人はどのようにしてマルチメディア・プレゼンテーションから学習するのか」というテーマを、20年に渡って研究したアメリカの心理学者がいます。
その研究結果を、伝わりやすく、理解しやすいプレゼンテーション・スライドを作るための4つの「法則」にまとめた記事が公開されていました。
The Principle of Continuity(「連続性」の法則)
この教授曰く、人の脳には、文字(テキスト)と、それに関連した画像の両方が存在しているときに、より理解し、記憶しやすくなるという傾向があるとのこと。
ある研究では、テキストと画像の両方を使ったプレゼンテーション・スライドは、そうでないスライドよりも「42%」記憶に残りやすいという結果が出ています。
The Principle of Coherence(「密着」の法則)
人が顕在意識のレベルで処理できる情報量には限界があります。
同時に処理できる限界を超えた大量の情報を一度に与えられると、脳はそれ以上の混乱を避けるために、対象物への興味を失ってしまうのです。
つまり、話し手は、聞き手の興味・関心をプレゼンテーションから逸らさないようにしたいのであれば、聞き手にとって重要なことだけをスライドに示さなければなりません。
The Principle of Signaling(「根拠を示す」法則)
通常、聞き手は、話し手が説明するテーマについて、話し手ほどの知識は持っていません。
話し手にとっては「当然でいまさら説明するまでもないこと」だったとしても、聞き手はまったく、あるいはほとんど知らないということが、むしろ普通です。
まったく予備知識がない人たちでも内容が分かるように、スライドなどの視覚情報をフルに活用して、話の「流れ」と「関連付け」をハッキリと示すことが、話し手の責任として求められます。
The Principle of Segmenting(「分割する」法則)
いくら聞き手にとって重要な情報であっても、1枚のスライドに大量の情報を詰め込んでしまうと、聞き手の注意を分散させてしまい、記憶に残りにくくなります。
スライドの情報量が、一目で内容が理解できるボリュームに抑えられていれば、聞き手の注意や関心を引きつけやすくなります。
5分間の説明が必要な1枚のスライドを作るよりも、そのスライドを5つに分けて、1枚を1分ずつで説明するほうが、はるかに分かりやすい伝えかたです。
つまり、当たり前のことですが、文字だけをたくさん詰め込んだプレゼンテーション・スライドは、聞き手にとって理解しにくいということです。
アタマでは分かっていても、いざ自分がプレゼンテーション・スライドを作ろうとすると文字だらけになってしまうのは、聞き手の視点を忘れてしまっているからです。
他人の退屈なプレゼンテーションには辟易していても、そういう退屈なプレゼンテーションを自分がやらかしてしまうことには、あまり痛みを感じないのです。
本質に絞り込んだメッセージを、シンプルに、かつパワフルに届けて、聞き手の行動を生みだすのが、理想のプレゼンテーション。
この「4つの法則」を念頭に、プレゼンテーションのやり方をイチから見直してみると、次のレベルアップの糸口が見つかるはずです。
この機会に、効果的なプレゼンテーションや図解の作り方を、もう一度おさらいしてみるのもいいですね。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。