秦の始皇帝とその武将李信が主人公の、中国の春秋戦国時代を描いた漫画『キングダム』が、4月14日までの限定で、1巻~10巻をウェブで無料公開しています。
子供の頃に歴史オタクだった私も、さっそく読みました。李信は、史実では「敗戦の将」として登場するのですが、漫画の中では「天下の大将軍」目指して、獅子奮迅の大活躍。今後、物語がどう展開していくのか、楽しみです。
この漫画の楽しみは、李信の立身伝だけではありません。他の登場人物のキャラクターも、敵・味方問わず、凄まじく立っていて、感情移入できるポイントがふんだんに用意されています。
中国歴史モノにありがちな、大きな身体と人間離れした腕力を持つ「超人」と、知謀の限りを尽くす「策士」も多数登場。主要な登場人物が揃いも揃って「リスクテイカー」であるところも、時代背景と相まって、起業家の胸を熱くしてくれます。
面白い漫画や小説には、登場人物の「キャラクター」を立たせる工夫が随所に凝らされています。特に『キングダム』のように、登場人物が多い作品は、「立ったキャラクター」のサンプリングに最高の教材です。他にも、『三国志』、『水滸伝』、『ジョジョの奇妙な冒険』等々。主人公より目立ってしまう「主役喰い」のキャラクターが登場してくるのも、こういう作品の特徴です。
ありきたりの特徴では、キャラは立ちません。キャラクターを立たせる要素は、良くも悪くも、「普通じゃない」ところであり、「異常さ」です。
単に「良い人」であることではキャラは立ちませんが、家族を奪われても、財産を身包み剥がれても、それらを奪っていった相手の幸せを願うような人であれば、強烈なキャラクターになります。
「異常さ」を創ることで、キャラクターのポジショニングが生まれます。経歴、能力、ルックス(見た目)、主義・思想、行動パターン、言葉使い・・・ありとあらゆるものが「異常さ」の源泉として使えます。
「異常さ」の軸を増やすことで、ポジショニングの自由度が高まります。軸がたった一つでは、ナンバーワンにならない限り勝負できず、たとえナンバーワンになっても、追いつかれ追い越されてしまうリスクがあります。複数のポジショニングの軸を持って、それらの組み合わせで違いを創り、他者と差別化すれば、それが模倣されにくい「自分らしさ」のベースになります。
そして、『キングダム』に登場するキャラクターについ感情移入してしまうのは、彼・彼女たちが際立った「異常さ」と、「人間味」の両方を併せ持った存在だからです。
単に異常なだけでは、他者から共感を得ることは困難です。ふとした仕草や言葉で、人々の心をつかみ、突き動かすことができる「異常な人」こそが、人々をリードし、世の中に変化を生み出します。
起業家として大きく成長したいのに、ただの「良い人」から脱皮できずにもがいている方や、なかなか自分自身をその他大勢から差別化するポイントが見えてこない方は、気分転換も兼ねて、『キングダム』の無料公開をご覧になってはいかがでしょうか?思わず続きが読みたくなり、11巻以降を大人買いしてしまうリスクがあることは、あらかじめご承知おき下さい(私は、Kindle版を買ってしまいました・・・)。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。