『ゼロ・トゥ・ワン』:「変人」だけが「ゼロイチ」を現実にする

洋書レビュー

 

PayPal創始者、ピーター・ティールの新刊は、

濃くて、難解な一冊。

 

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

http://www.amazon.co.jp/dp/4140816589

 

この本を読むと、

巷の「ゼロイチ」を謳うコンサルタントが、

「創造」ではなくて「1からn」、

つまり既に存在しているものの「改善」を

やっているにすぎないことが分かる。

 

ゼロからイチを生み出すのは、

何もないところにエネルギーと方向性、

つまり「ベクトル」を生み出して、

測定可能な「実体」を創りだすこと。

 

まだ世の中に存在していないものを想像して、

それをカタチにする過程で直面するのは

周囲の人たちからの「無視」や「無理解」。

 

そりゃ、そうだ。

 

誰のアタマの中にもないものは、

その価値を理解するための

判断材料がないということだから。

 

一見して価値が分からないものを

創ろうとしている人たちは、

「変人」扱いされる宿命にある。

 

いったん「変人」扱いされれば、

周りの人たちは冷淡になる。

 

誰もまともに話を聞いてくれなくなる。

メールやメッセージへの返信もなくなり、

昔からの友人も去っていく。

 

でも、その孤独の先にしか、

新しいモノを生み出すビジョンを共有できる

本当の同志は見つからないし、

「ゼロイチ」の実現はない。

 

PayPalも、「電子メールで決済を行う」という

アイディアをカタチにした当初は、

「最もバカげたアイディア」と揶揄された。

 

それがいま、ネットの世界では欠かせない

決済手段になっている。

 

「変人」になりきれる勇気と、

「変人」であり続ける覚悟。

 

「まだ解決されていない問題を直視して、

ユニークな解決法を提示して、世界を変えたい」という

起業家としての大胆でシンプルな生き方が、

その「勇気」と「覚悟」の根底にある。

 

どんな状況に置かれても、

愚直に、純粋に、その生き方を貫くことが、

世界を変える唯一の方法。

 

そんなことに気付かされる一冊です。

 

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

http://www.amazon.co.jp/dp/4140816589

 

神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。