【ビジネスモデル】Etsy

今日は、2005年の創業以来、急成長を続けている、Etsy（エッツィ）を取り上げます。

基本的には、日本の楽天と同様に、「オンラインショッピングモール」のビジネスモデルです。ジュエリーや衣類、家庭雑貨などの手工芸品や、家具、アート作品、古物などの商品につき、生産者（販売者）と購入者を直接結びつける商取引プラットフォームを提供している企業です。

【ポイント】

販売者からの「搾取構造」を緩めることで、ユニークな商品を製造・販売している個人や小規模事業主を数多く取り込めているところが、Etsyの特徴です。

【収益構造】

基本的に、電子商取引プラットフォームの企業は、販売者からの出店手数料と、取引金額に一定比率を乗じた手数料を収益源としています。例えば、楽天のスタンダードプランでは月商の６％～８％弱が、全ての手数料の合計となっています。（2013年2月現在。出所：http://www.rakuten.co.jp/ec/plan/）

一方でEtsyは、販売者から月々定額の出店手数料は徴収せず、その代わりに出品したアイテム１個につき月額２０セントを徴収。販売完了時に徴収する売買手数料は取引金額の3.5％で、それ以外の費用請求はありません。

【コア・アクティビティ】

Etsyが注力する主な活動は、販売者の商品開発・プロモーション支援、自社のブランディングとプロモーション活動、そして販売システムの継続的な改善であり、約４００人の従業員のうち１４０人超がエンジニア、１００人超が商品開発やマーケティング担当という構成です。また海外へのサービス展開にも注力していて、現在は２００ヶ国で取引が可能です。サイトの日本語対応はまだ行われていませんが、購入・販売両方で、日本での取引高も順調に伸びているようです。

参考１：2012年の購入者分布。濃い色の国々での取引割合が高い。

参考２：2012年の販売者分布。濃い色の国々での取引割合が高い。

（出所：http://www.etsy.com/blog/news/2013/notes-from-chad-2012-year-in-review/）

【顧客メリット】

取り扱い品目が少なく、月商も高くない事業主にとっては、販売活動に伴って発生する固定費の比率はできるだけ下げたいところです。Etsyの出店料ゼロ、出品料１アイテム当たり２０セント／月という料金体系は、実店舗を構えるコストに比べるとはるかに低い水準です。加えて、実店舗を構えないことで販売活動に要する時間を生産活動に振り向けることができるため、人手が少ない小規模事業にとって、Etsyのサービス内容は強力なソリューションになります。

【今後の注目点】

プラットフォーム型の企業は、いわゆる「胴元」として全てのルールを決めることができます。

分かりやすい例では、会員システムなどを利用して多数の購入者を抱え込み、プラットフォームの価値を高めた後で、自社の収益性改善のために、販売者に対する利用手数料を引き上げることが可能です。

Etsyは、その財務健全性の高さからベンチャーキャピタリストの注目を浴びており、現在までに総額９１７０万ドルの出資を受けています（出所：http://www.crunchbase.com/company/etsy）。今後、おそらく株式公開を目指すのでしょうが、株主などの外部ステークホルダーからの圧力に屈することなく、プラットフォーム型企業の「傲慢さ」にとらわれないことが、Etsyが世界中のデザイナーやアーティストにとっての「目的地」であり続けるために必要でしょう。

【参考１：Etsyへの出店】

デザイナーやアーティストの方々は、Etsyへ出店することで、世界規模での販売機会が得られます。Etsyはまだ日本語対応をしていないため、語学（英語）のハードルを超えなければなりませんが、Etsyへの出店ノウハウに関する書籍も出版されていますので、ご興味のある方はチャレンジされてはいかがでしょうか。出店に際して、弊社によるサポートをご希望の方は、お問い合わせ下さい。

How to Make Money Using Etsy: A Guide to the Online Marketplace for Crafts and Handmade Products （ペーパーバック、Kindle版）

【参考２：Etsyの業績スナップショット】

（2013年2月現在、$1=93円換算。出所：http://www.etsy.com/press/）

2012年の取引成約額：　895.1百万米ドル（約832億円）

出店店舗数：　80万ショップ超

出店アイテム数：　1800万アイテム超

サイト訪問者数：　月間4200万UV

ページビュー数：　月間14億PV超