異文化のバックグラウンドを持つ方々とのコミュニケーションにおいては、日本人同士では通用するやり方が通じなかったり、あるいは非常識とされることが当たり前に行われたりします。
そこでいちいち気分を害したり、怒ったりしないようにするために必要なスキルは、いったい何でしょうか?
ストレートな言い方
私自身、海外に関わる仕事をするようになって15年経ちますが、今でも欧米圏の人々、特にアメリカ人と仕事をしていて時々ビックリするのが、ビジネスアイディアや仕事のアウトプットに関しての「率直すぎる」フィードバック(意見、感想)です。
一緒に仕事をするような親しい間柄になれば、なんの遠慮もなく、良いものは良い、悪いものは悪いと、ハッキリと言い切ってくれます。
背景には「好意」と「信頼」
そこでの大前提は、あくまでもフィードバックの対象が、「人」ではなく、アイディアやアウトプットに限定されていることです。
「でもこのアイディアはダメだね」とか、「この前の仕事は良くなかったね」というセリフの裏には、「あなたのことは好きだけど/信頼しているけど・・・」というフレーズが隠れています。
どんなに酷評しても、相手の人間性までは否定・批判していません。むしろ、相手の人間性を信頼し、敬愛しているからこそ、アイディアやアウトプットをより良いものにするための、率直な意見を出してくれるのです。
日本人には通用しない?
このようなアプローチは、日本においては、あるいは日本人に対しては、とんでもない誤解と激しい衝突を生み出す原因になります。
私たち日本人の多くは、アイディアや仕事の結果に対して悪いフィードバックを受けると、私たち自身も否定された気分になります。
フィードバックを与える人にも、混同があるのかもしれません。本来のフィードバックの対象であるアイディアやアウトプットと、そのアイディアやアウトプットを生み出した人が、アタマの中で切り離されていないのかもしれません。
元々、そういう割り切りができない民族的特性や文化的背景があるがゆえに、たとえ「建設的な批判」であったとしても、非難めいたことは口にしないという慣習が染み付いているのかもしれません。
それはそれで、円滑な人間関係を築き上げるには、有効な方法です。
次善の策でも・・・
しかし、アイディアやアウトプットをより良いものにするためには、言うべきことは言わなければなりません。
「非難」と誤解されるようなことを口にするのは慎むとしても、こうすればもっと良くなる、ここはこういう見方もあるのではないか、といった「プラスアルファ」の意見はハッキリと口にすべきです。
厄介なのは、そういう「プラスアルファ」の意見に対して、いちいち反射的に反論を試みたり、「お前、なにエラソーに喋ってんだ?オレのやることに文句があんのか?」と絡んでくる方が、時々いることなのですが・・・
そういう言動の是非は、ここでは論じません。
ただ、海外の人々とビジネスの世界において対等にやり合っていくには、そういうタイプの自己主張が極めて子どもじみた、未熟な対応と見なされることは、認識しておいて頂きたいですね。
まずは、他人のフィードバックの「受け入れ力」を、鍛えましょう。
神戸を拠点に活動するビジネスコンサルタント。アメリカでの7年間の勤務経験を含め、これまで色々な業界で、30を超える国・地域でプロジェクトに関わる。遊びで始めたInstagramへの投稿がきっかけになり、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活動。