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マルクス・アウレリウス『自省録』と「瞑想」の意外な関係

 

年間に4000時間働いていた15年前の私は、人間不信でした。

 

人に任せられる仕事も、自分でやらなければ気が済まない。

私の上司のことを、私が出した成果は横取りして、あらゆる失敗の原因を私に押し付けてくる存在だと決めつけている。

あまりにも長時間働いている私を見かねて、サポートを申し出てくれた人のことを、なにか思惑があるんじゃないかと疑ってかかる。

仕事を手伝ってもらうことが「屈辱」のように思えて、実際に手伝ってもらったときも、感謝の言葉が素直に口から出てこない。

私よりも短い労働時間で、仕事の成果を上げている同僚を妬み、もっと長い時間働くことで「自分は凄いんだ」と自己正当化する。

 

体力の限界まで働いて成果を出しても、誰からも認めてもらえず、周りの人たちとの関係がうまくいかない。

それもすべて、私の「人間不信」な態度が、私の言動に表れていたからです。

 

人生を変えたマルクス・アウレリウスの文章

そんな私の考え方を変えたのは、ローマ帝国の五賢帝の一人、マルクス・アウレリウスが記した『自省録』の一節でした。

少し長くなりますが、その箇所を引用します。

 

“When you wake up in the morning, tell yourself: the people I deal with today will be meddling, ungrateful, arrogant, dishonest, jealous and surly. They are like this because they can’t tell good from evil. But I have seen the beauty of good, and the ugliness of evil, and have recognized that the wrongdoer has a nature related to my own – not of the same blood and birth, but the same mind, and possessing a share of the divine. And so none of them can hurt me. No one can implicate me in ugliness. Nor can I feel angry at my relative, or hate him. We were born to work together like feet, hands and eyes, like the two rows of teeth, upper and lower. To obstruct each other is unnatural. To feel anger at someone, to turn your back on him: these are unnatural.”
http://www.goodreads.com/quotes/497005-when-you-wake-up-in-the-morning-tell-yourself-theより)

 

日本語訳(当ブログ管理人によるもの)

「朝目覚めたとき、自分自身にこう言い聞かせよ。今日、私が対応する人たちは、おせっかいで、感謝の念を持たず、傲慢で、不誠実で、妬みを持ち、無愛想だ。彼らがこのような人であるのは、彼らが善悪を見分けることができないからなのだ。しかし私は、善きものの美しさと悪しきものの醜さを見てきており、悪いことをする人も私と同じ性質を持っていることに気づいている。それは同じ血と出自という性質ではなく、彼らも私と同じ精神、そして神性の一部を持っているということだ。ゆえに、彼らの誰一人として、私を傷つけることはできない。誰一人として、私を醜さに巻き込むことはできない。そして私は、そんな私の仲間たちに怒りを覚えることもできなければ、憎むこともできない。私たちは、両足や、目と手、上下に並ぶ歯のように、協力して働くために生まれてきたのだから。お互いに邪魔をすることは、自然の摂理に反している。誰かに怒りを覚えることも、誰かを無視することも、自然の摂理に反しているのだ。」

 

認識が変われば世界の見え方が変わる

このマルクス・アウレリウスの言葉は、心に突き刺さりました。

最初の「感謝の念を持たず、傲慢で、不誠実で、妬みを持ち、無愛想だ」という記述がその頃の私自身を端的に表していて、

さらに後半の「そして私は、そんな私の仲間たちに怒りを覚えることもできなければ・・・」以降の記述が、当時の私に一番欠けていたマインドセット(心構え)の本質を突いていたからです。

 

私たちビジネスパーソンは、そのキャリアを通じて何度も何度も、困難な状況に陥ります。

  • 自分のアイディアをことごとく否定する人たちが周りにいて、やる気が出ない・・・
  • 新しい商品・サービスを生み出すためのプロジェクトが、社内政治や人間関係の対立に巻き込まれてしまい、先に進まない・・・
  • どんなに一生懸命営業をしても、自社の商品・サービスの価値が、お客さんに分かってもらえない・・・

 

そんな困難な状況において、邪魔をしている、あるいは理解してくれない相手に憤りや怒りを感じても、憎しみを覚えても、事態はなにも変わりません。

逆に、ますます悪くなっていく一方です。

 

そんなとき、相手の本音や気持ちがどうであろうと、自分だけでも「私たちは、協力して働くために生まれてきた存在なんだ」と思い定めることができれば・・・

相手も自分と同じように、さまざまな感情や情動、信念や理想、悩みや問題を持った「人間」であることに気付きます。

自分自身の利害をいったん脇に置いて、相手にとって最善の状態が何なのかを考える余裕が生まれます。

現状を打開するアイディアが次々と湧いてきます。

 

多くの困難な状況が克服できないのは、環境や周囲の人たちのせいではなく、私たちが現状の捉え方を変えられないことが最大の原因なのです。

 

人間不信だったからこそ得られた気付き

日本では『自省録』という名前ですが、英語のタイトルは”Meditations”。

「瞑想、黙想」という意味です。

 

私自身は瞑想を始めて8年、瞑想を毎日の習慣にしてから1年近く経ちますが、マルクス・アウレリウスの言葉が示唆している「どんな人たちも、自分と同じ性質を持っている」ということが、日々の瞑想を通じてようやく分かってきました。

 

瞑想は、いろいろと誤解を生みやすい行為ではありますが、その本質は「自分の意識の持ちようを知る」ための「心のトレーニング」です。

静かに座り、自分の呼吸に意識を向けることで、自分の中にある思い込みや情動の存在に気付きます。

その思い込みと情動を、善悪の判断をせず、ただ観察することで、それらが自分から切り離された客観的なものとして認識できるようになります。

客観的なものとして認識できれば、それを変えることはカンタンです。

 

私が20年前の自分に一つだけアドバイスするなら、迷わず「瞑想を毎日の習慣にすること」を挙げます。

そうすれば、自分勝手な思い込みに基づいた人間不信に陥ることもなく、全く違う人生を歩んでいたと、今ならはっきり分かるからです。

 

ただ、そんな回り道をしてきたからこそ、『自省録(Meditations)』の内容と、瞑想によって得られる心の状態とのつながりに気付いたのかもしれません。

 

You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward.

(将来を見据えて点と点をつなげることはできない。できるのは、後からつなぎ合わせることだけ。)

 

今から10年前に行われた、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式スピーチの一文を思い出しました。

 

あなたにとっての「後からつなぎ合わせられる点と点」は、何ですか?

 

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Published in 名言・処世訓