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カーブドッチにナイアガラを視る

 

先月、新潟のワイナリー、カーブドッチに行く機会がありました。

このワイナリー、テレビ東京『カンブリア宮殿』で取り上げられたときから、ずっと行きたかった場所です。起業家視点では、資金調達の方法として「ブドウ苗木のオーナー制度」を考案したユニークさに強く惹かれた一方で、大量生産を志向しないワイナリー経営で、どうやって採算を確保しているのか疑問でした。カンブリア宮殿の企業プロフィールでは「年商:10億円(うちワインの売り上げ1億円)」とあり、ワイン以外の9億円はいったい何なのか、その収益モデルを確かめたいと思っていました。

 

新潟駅からJR越後線で約25分、さらに車で約15分のところにカーブドッチがあります。

カーブドッチの敷地内には、ワイナリー(醸造所)に加えて、ワインショップ、レストラン、ベーカリーとソーセージ工房があり、またコンサートや結婚式にも使えるホールがあります。隣には、温泉・宿泊施設のヴィネスパが建っています。(ヴィネスパは、カーブドッチワイナリーとは別の会社が運営を行なっていますが、代表者が兼務しています)

オフ・シーズンなのでブドウの樹には全く葉っぱがなく、あまり存在感を感じませんでしたが、カーブドッチのパンフレットによると、現在7ヘクタールの畑でブドウを栽培しているようです。山梨県ワインセンターのフランスワインに関する統計を元に、1ヘクタール当たりのワイン生産本数を試算してみると、750ml瓶で約8,000本分、7ヘクタールだと約56,000本。平均単価を3,000円としても、売上高は1億6,800万円。企業プロフィールに記載されているワイン売り上げ高は、これだけざっくりとした試算でも、検証できます。

カーブドッチの沿革を見ると、ユニークな資金調達に加えて、収入源の多角化を図ることで、ブランディングの核であるワイナリーの経営を支えていることが分かります。

カーブドッチの隣には、フェルミエドメーヌ・ショオ、セトワイナリーといった新しいワイナリーができており、この一帯がワイン産地として成長し始めていることが実感できます。

 

カーブドッチの敷地内を歩いていて、以前に訪れたカナダのナイアガラ半島を思い出しました。トロント中心地からは車で1時間半くらい、ナイアガラの滝からは車で30分くらいの場所にある、1970年代から本格的なワイン造りが始まったこの地域には、手作業を中心に丁寧なワイン造りをおこなっている60以上のワイナリーが点在しています。レストランや宿泊施設・スパも多く、のんびりと数日滞在して、じっくりワイナリーとレストランを巡るのも楽しい、大人向けのエリアです。

 

ワイン造りに向いた「地の利」は、それを活かそうとする「人」がいなければ、見出されることはありません。事業として立ち上げるには、「知恵と仕組み」が必要です。その事業を持続させ、地域に定着させていくには、数十年単位での「ビジョン」が必要です。

これらが全て揃えば、ワイン文化の後発国である日本でも、カーブドッチのような「場」を作ることができる。ビジョンで人々の共感を得て、事業の成功例が生まれることで新しい挑戦者が集まり、コミュニティが拡大していく。カーブドッチには、地方経済の停滞を打破するヒントがあり、ナイアガラ半島のような魅力的な郊外コミュニティとして成長していく萌芽があります。これからも定点観測を続けていきたい場所です。

 

photo by: IanL

Published in ビジネスモデル